この記事の執筆者
パーソナルフィットネストレーナー
向井 ひろみ
フィットネストレーナー歴17年。2021年まで大手フィットネスクラブでパーソナルトレーナー、スタジオインストラクター、フィットネスマネージャーとして勤務後パーソナルトレーナーとして独立。「継続に勝る効果的な運動なし」がモットー。最も効果的な運動ではなくそのお客様が継続できる範囲で最も効果的な運動をご案内することに拘りをもつ。現在は継続率80%超えのパーソナルトレーナーとして自由が丘、川崎にてパーソナルスタジオを運営。
ダイエットなどでカロリー制限をしているとき、眠れない、寝付きが悪いといったことはありませんか?
実はカロリーが不足することと眠りの質が低下することは関連があるのです。
この記事ではなぜカロリー不足が不眠の原因になるかとその対策を解説していきます。ダイエットをすると眠れなくてつらい、困っているという方は是非ご覧ください。
カロリー不足は不眠の原因になる
カロリー不足が不眠につながる原因として1つ大きい点を挙げるとすれば
「メラトニン」の分泌量が減少しやすいこと
があります。
メラトニンとは、一言でいうと寝る時間を知らせてくれる役割があるホルモンです。
脳の松果体から分泌されるホルモンで、必須アミノ酸のひとつであるトリプトファンから合成されたセロトニンという副交感神経の伝達物質からつくられます。
では、なぜカロリー不足になるとメラトニンの分泌量が減少しやすいのでしょうか。
それは、メラトニンの材料であるトリプトファンが乳製品や肉類、穀物(主食)などに多く含まれるものの、それらの摂取量がカロリー制限によって減少してしまうからです。
ダイエット中に不眠に悩む人は
食事量が減ったことにより栄養のバランスが乱れていないかを見直すこと
が必要です。
食べ過ぎも不眠の原因に
一方で、食べ過ぎも不眠の原因になり得ます。
眠気は脳の温度が下がるときに感じるようになりますが、食べ物を体内で消化・吸収するときは体温が上がります。
その後、1~2時間のうちに体温は下がっていきます。
「食事は寝る2時間前までに済ませましょう」とよく言われるのは眠りに入りやすくするという意味もあるのです。
しかし
- 食べ過ぎ
- 脂っこい食事
- 刺激の強い食べ物
といったものは消化に時間がかかったり体温がいつも以上に上がったりするため、眠りにつきにくくなることがあります。
もし不眠に悩まされている人でこれらに当てはまる人は、見直すと眠りにつきやすくなるかもしれません。
食べ過ぎも食べなさ過ぎもともに不眠の原因になるということです。何ごともバランスが大切ですね。
不眠は日常生活にさまざまな影響を及ぼします
不眠になると身体的につらいことは当然ですが、それにより様々な影響をもたらします。
具体的に不眠がどのような影響を及ぼすか、それぞれ見ていきましょう。
仕事や勉強のパフォーマンスが低下し、経済的損失につながる
不眠が続くと日中に倦怠感や意欲低下、集中力低下といった症状が現れます。
そうなると仕事や勉強でもケアレスミスが増えたり、効率が低下することで思ったような成果がなかなかあげられなくなります。
そのことから、仕事仲間や取引先からの信頼を失ったり、試験で実力が発揮できずに進路に影響が出てしまうようなことがあれば大きな経済的損失となってしまいます。
免疫力が低下することで病気にかかりやすくなり、生活の質が低下する
不眠になると糖尿病や高血圧、脂質異常症などの生活習慣病など様々な病気のリスクが高くなると考えられています。
病気になると通院のために時間や費用がかかったり、入院となるとベッドで寝ている時間が長くなることで体力の低下に繋がります。
また、糖尿病のように合併症を発症すると目が見えなくなったり手足を切断しないといけなくなったりするといったような身体の機能を大きく失うこともあります。
こうなると日常生活に大きな制限がかかることになります。
太りやすくなる
実は不眠になると太りやすくなるのです。
人間は空腹感、満腹感をホルモンの働きによって感じます。
「グレリン」というホルモンが空腹感を与え、「レプチン」というホルモンが満腹感を与えます。
2020年の上海交通大学の報告によると、睡眠不足になるとグレリンは増加し、レプチンが減少することが示されました。
ということは睡眠時間が短いと空腹を感じやすくなり、食べすぎにつながりやすいと言えます。
(参考文献:庵野拓将著「科学的に正しいダイエット 最高の教科書」2021年 株式会社KADOKAWA発行)
ダイエットのためにカロリー制限をしているのにそのせいで不眠になって太りやすくなってしまっては元も子もないですよね。
カロリー不足で困るのは不眠だけじゃない
カロリー不足になって困ることは不眠だけではありません。
カロリー不足になると
- 体重減少(筋肉量減少や骨粗鬆症のリスク増)
- 代謝の低下(体重が減ってもリバウンドしやすくなる)
- 疲れやすくなる
- 集中力低下
- 便秘になりやすい
といった不都合なことが起こりやすくなります。
ダイエットは見た目を良くするため、健康のために行うことが多いと思いますが、やみくもにカロリーを制限しすぎてしまうと見た目や健康を損なうという矛盾したことが起こってしまうのです。
対策は3つ
不眠にならないようにするための対策はいくつかありますが、取り組みやすい代表的なものを3つ紹介します。
まずはできるものから試してみて、不眠を改善していきましょう。
睡眠前に部屋を暗くする
メラトニンの分泌量は目に入る光の量で調節されます。目から入ってくる光の量を少なくする時間をつくることによって、メラトニンの分泌量が増えやすい環境にすることができます。
可能であれば寝る2~3時間前には薄暗い部屋で過ごせるようにしましょう。
明るさを調整できる照明器具や間接照明をうまく使うと生活に支障がでない範囲で部屋を暗くすることができます。
また、青っぽく明るい照明(昼白色や昼光色)よりも赤っぽい暗い照明(電球色)のほうが眠りに入りやすいとも言われているので、照明の色を変更できる照明器具を使用することもオススメです。
睡眠の1時間半~2時間前に入浴する
食べ過ぎの章でもお伝えしましたが、人の身体は体温が上昇してから低下するタイミングで眠気が促されます。
そのため、入浴を睡眠前の1時間半~2時間前に行うとちょうどいいタイミングで体温が低下していくため眠りにつきやすくなります。
また、入浴はリラックス効果によって自律神経が副交感神経が優位な状態になります。このことも身体を睡眠モードへと導いてくれます。
副交感神経を優位にすることを考えると、お湯の温度は38度~40度、おすすめの入浴時間は諸説ありますが15分~30分程度がよさそうです。
バランスよく食べる
睡眠導入ホルモンである「セロトニン」は元は必須アミノ酸である「トリプトファン」からつくられると最初にお伝えしました。
やみくもなカロリー制限はトリプトファン不足を招き不眠に至る可能性があります。
つまり、バランスよく食べトリプトファンが不足しないようにすることが不眠対策になります。
トリプトファンは
- 乳製品
- 大豆製品
- かつお
- まぐろ
- 牛肉
- 卵
- 穀類(主食)
に多く含まれています。
これらの食材からは筋肉の材料となるタンパク質や身体を動かすエネルギー源となる糖質も摂取できるため、消費カロリーを増やしてやせやすい身体をつくるためにも有効です。
不眠対策は他にもいろいろありますが、比較的すぐにできそうなものを紹介しました。
まとめ
カロリー不足が不眠をもたらす原因、不眠が与える日常生活への影響、不眠対策を紹介しました。
トレーニングと食事だけでなく、睡眠の質も上げることによって身体づくりは成功し、生活の質も向上していきます。
睡眠時間を削ってなにかを頑張ることを科学的に効率のいいこととは言えなさそうです。
なにかうまくいかないことがあるときに不眠だとするならば、まずは不眠を改善するところから始めてみてはいかがでしょうか。